OFのブログ

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微分形式と電磁気学(その2)


微分形式と電磁気学 - OFのブログ

の続きを書いた.

 

ユークリッド空間での微分形式の話を3次元の場合に適用し,マクスウェル方程式微分形式の形で書くことで違う見え方をしてくるというところを書いた.具体的にはD,BとE,Hを区別するというのが重要な点で,また勾配や回転や発散がすべて外微分として統一的に書けるところもよいと思っている.

 

http://image02w.seesaawiki.jp/o/l/orpahlil/152e8f36ee93f176.pdf

 

簡単に読めるので是非読み物として読んで助言をいただきたい.

微分形式と電磁気学

そろそろ電磁気学の単位がやばいなと思って電磁気の教科書をぱらぱらめくり,とりあえずそれぞれの物理量の意味の理解を全部無視してマクスウェル方程式を眺めていたのだが,微分1形式は線積分されて微分2形式は面積分されるといううろ覚えの知識をもとにマクスウェル方程式微分形式の形で書くことを試みた結果,思ったより面白い結果が出たのと同時に,ある意味での混同が余計にことを分かりにくくしているのではという感じを受けた.

 

特に,回転と発散はそれぞれ,微分1形式,微分2形式の外微分であり,微分形式の立場からすれば,同じ元に作用させられるものではない.しかし,マクスウェル方程式はしばしば,磁束密度{\mathbb{B}}と電場{\mathbb{E}}のみを用いて書かれ,それらは回転と発散の両方の作用を受けている.これは,空間が3次元であるおかげで,1形式と2形式(の各点での値)が共に3次元であるから({{_{3}}C{_{1}} = {_{3}}C{_{2}} = 3}),これらをうまく同一視できる,という前段階を経ているとも捉えられる.すると,(微分形式という文脈からして)もっと自然な形は,磁束密度{\mathbb{B}}と磁場{\mathbb{H}}電束密度{\mathbb{D}}と電場{\mathbb{E}}を区別し,それぞれ前者を2形式,後者を1形式として書くやりかたであろう.

 

また,勾配の回転が0とか,回転の発散が0とかいう公式は電磁気の教科書で使うベクトル解析でよく用いられ,それぞれの記号がその意味を訴えかけてくることが逆に災いして見にくくなっているような印象も受けるが,これらが全て微分形式の外微分dにあたることを考えれば,外微分は2つ合成すると0になるという性質でまとめて表現できる.

さらに,ポアンカレ補題から,「\mathbb{R}^{n}上の微分p形式(p>0)については,それの外微分が0であれば,外微分がそれと等しいような微分p-1形式が存在する」ことが言える.これも,回転や発散が0になるベクトル場に対してのベクトルポテンシャルスカラーポテンシャルの存在をまとめて言い表せていることになる.

 

このような動機から,マクスウェル方程式に現れる物理量を微分形式とみなすことで,微分形式について調べられてきた結果を用いていくつかの事実が違った風に説明できるのではということを少し考えている.これには,しろねつ氏(ブログ↓)が最近3次元以外での電磁気学を考えているのに触発された面もある.


しろねつぶろぐ

一つ,より高次元ではマクスウェル方程式の類似がうまく機能しないのではと考える理由として,先ほども述べたように,外微分は2つ行くと0になってしまうので,たとえばn次元において,3次元の場合同様に場を1形式で定義し,p形式とn-p形式を同一視したところで,1形式とn-1形式が2つ以上離れてしまうので,その間の関係を外微分を使って表現しようとしてもうまくいかないのではないかということがある.これに関連して,マクスウェルハウスという面白いものを見つけたのでリンクを貼っておく.

http://bfi.cl/papers/Koc%202011%20-%20Maxwell%20house%20and%20some%20introductory%20differential%20geometry.pdf

 

また,上では主に空間だけを問題にしていたが,マクスウェル方程式は,時間を空間と同等に扱って4次元空間の微分形式の形で書くと,より簡潔に書くことができる.すなわち,相対論で出てくる電磁テンソルに相当する微分2形式\mathcal{F}と,それを2形式と4-2形式を同一視する対応で送った2形式{^{\ast}}\mathcal{F}について,

\mathrm{d} \mathcal{F} = 0
\mathrm{d} {^{\ast}} \mathcal{F} = {^{\ast}}\mathcal{J}

と書ける.ここで\mathcal{J}は4元電流に相当する量である.この形ならばもっと高次元にも適応できそうではあるが,やはり2=4-2を使っているという感もあるので3次元のありがたみが分かるという感じである.

 

そういうわけで上のような内容をまとめたPDFを書いているのだが,自分の勉強ノートも兼ねて微分形式の導入パートを書いていたらそれだけでかなり長くなってしまった.とりあえず途中まででアップロードする.

 

http://image01w.seesaawiki.jp/o/l/orpahlil/b3b92fadcccd3a8f.pdf

 

微分形式については,主に下の本を参照している.

http://www.amazon.co.jp/dp/4130629565

坪井俊【幾何学〈3〉微分形式 (大学数学の入門)】

 

今のところはほとんど上の本の1章(ユークリッド空間の微分形式)の内容をまとめたものであるが,p形式とn-p形式を結びつける話だけは,ユークリッド空間だけの話はこの本には載っていなかったので,コンパクトリーマン多様体についての記述を参考に適当に書いた.ただし,この本では普通の計量しか扱っておらず,ミンコフスキー時空に適用できるような擬計量の話題はない.

p形式とn-p形式を対応づけるのはホッジのスター作用素などと呼ばれるものであるが,これは一般の(多様体上の)微分形式に対して一意に定まるものではなく,計量が定まっている必要があり,特に相対論では擬計量と呼ばれるようなもの(自身との内積が常に非負とは限らないもの)が使われるのだが,擬計量についてのスター作用素がどういう風になるのかというのが載っている本を今だに見たことがなく,このあたりはよく分からない.

昔作ったプリント

夏の駿台の東大の実践模試の数学で,「直観に頼らないギロンが必要」と0不可を頂いてしまって反省して作ったプリントを思い出したので少し手を加えてアップロードしてみました.といってもオリジナルな内容が全くないのでクソだけどまあシケプリっぽい(?).

 

http://image02w.seesaawiki.jp/o/l/orpahlil/052a8b7dd0bbedbf.pdf

 

(ココログの同内容の記事へのリンク)